【獣医学博士監修】シニア期の愛犬・愛猫の健康寿命を支える栄養学

【獣医学博士監修】シニア期の愛犬・愛猫の健康寿命を支える栄養学

 

【獣医学博士監修】シニア期の愛犬・愛猫の健康寿命を支える栄養学

シニア期を迎えた愛犬・愛猫の健康を支え、長寿を目指すには、与える食事にこだわることが大切です。この記事では、ペットの老化や加齢性疾患の原因となる炎症に注目し、炎症を抑制する抗炎症食について詳しく解説しています。大切なペットの健康をサポートするための参考にしてみてくださいね。

⚫︎1.長寿をサポート「シニア期の犬と猫の栄養学」

愛犬・愛猫が年齢を重ねると、栄養のニーズも変わります。さまざまな研究を通じ、ペットの生活の質には、『炎症』の管理とコントロールが大切だということが明らかになりました。

ペットの加齢に炎症が与える影響とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

合わせて、インスティンクトのローフード(生食)のような、加工を最小限に留めた食事とその抗炎症成分が、ペットの健康寿命を伸ばす可能性について考えてみましょう。

⚪︎1.1年齢を重ねたペットの栄養学を知ろう

ペットが年齢を重ね、シニア期を迎えると、運動能力や記憶力が低下したり、臓器の機能が衰えたりと、さまざまな問題が出てくるものです。こうした問題に対処するためには、適切な栄養の摂取が欠かせません。

老化のプロセスには、犬・猫それぞれの品種・遺伝・環境はもちろんのこと、食事が影響を与えることが分かっています。*1

また、こうした加齢にまつわる症状が現れる前から、食事をしっかりと管理することで、加齢のプロセスを変えられる可能性があることも明らかになっています。

愛犬・愛猫の健やかな加齢のサポートには、必要な栄養素と、それらが加齢に及ぼす影響を知ることが大切なのです。

⚪︎1.2炎症はペットの加齢にどう影響する?

年齢を重ねたペットには、慢性的な炎症が見られるようになります。これは「炎症老化」と呼ばれるもので、目立った感染症を伴うことなく進行するのが特徴です。慢性的な炎症は、ぜんそく・関節リウマチ・アトピー性皮膚炎のほか、生活習慣病や老化・がんの発症にも関わっているとされています。

この炎症に大きな影響を与えているのが、フリーラジカル(=周囲の細胞にダメージを与える分子や電子。活性酸素の一種)の過剰な生産です。フリーラジカルの過剰な生産がペットの細胞や組織にダメージを与え、老化や加齢性疾患の進行を促進している可能性が指摘されています。

⚪︎1.3年齢を重ねたペットの炎症とマイクロバイオーム

シニア期を迎えた犬・猫は、腸疾患・アレルギー・肥満などの問題を抱えがちですが、これらの問題には、マイクロバイオームと呼ばれる微生物叢が関わっています。

マイクロバイオームとは、生物の体内に共生する細菌・真菌・寄生虫・ウイルスなどの微生物の集まりのことです。「腸内細菌」「腸内フローラ」はよく知られた言葉ですが、これは小腸・大腸に作り出されたマイクロバイオームをいいます。

ペットが食事から摂取する栄養は、マイクロバイオームの組成にも影響を与えます。マイクロバイオームは、腸管免疫系との相互作用を通じて炎症を誘発したり、予防したりといった働きを持っていることから、食事がペットの健康に直接的な影響を与えることになるのです。*2

なお、ローフード(生食)を与えられた動物と、加熱処理された食品を与えられた動物とを比べると、消化管に存在するマイクロバイオームの組成と代謝に違いがあることが分かっています。*3

⚫︎2.抗炎症食が果たす役割

人間の抗炎症食では、高度に加工された食品の摂取を最小限に抑え、栄養価の高い食品を丸ごと、もしくは最小限の加工で摂取します。

ペットの慢性的な炎症を抑制するためには、人間の抗炎症食と同様に、加工を最小限に留めたフードを用意する必要があります。具体的には、素材になるべく手を加えずに丸ごといただくホールフードの考え方に則った、最低限の加工を施した完全栄養食のフードや、フリーズドライのローフード(生食)・冷凍食品などです。

こうした食事を選ぶことで、ペットの炎症にまつわる反応に変化を起こせる可能性があります。

⚫︎3.シニア犬・シニア猫のための抗炎症食に含まれる主な栄養素

シニア期の犬・猫の長寿を支える栄養とはいったいどのようなものなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

⚪︎3.1n-3系脂肪酸

魚油や特定の植物由来のn-3脂肪酸には、炎症を抑制し、関節・皮膚の健康維持や、認知機能の改善などの強力な抗炎症作用があります。

ほとんどのシニア向けの食事には、魚油や植物由来のn-3系脂肪酸が含まれていますが、その中でも海藻油がより適した選択肢とされています。

⚪︎3.2抗酸化物質

抗酸化物質を豊富に含む食品は、フリーラジカルと呼ばれる細胞にダメージを与える分子や原子を中和し、酸化のダメージから細胞を守ります。完全栄養食のペットフードには、抗酸化物質として働く必須栄養素(ビタミンE、A、セレンなど)が含まれています。

また、野菜や果物には、抗炎症作用や抗酸化作用のある植物ポリフェノールが含まれています。しかし、これらの植物化学物質の多くは加熱処理中に破壊されてしまうため、加工工程がより少なくしたペットフードにしか含まれていません。

⚪︎3.3その他の生物活性化合物

植物性・動物性を問わず、食品には有益な化合物が豊富に含まれています。例えば、白身魚にはエース阻害活性を持つ22種類のペプチドが含まれていることが示されています。*4

ペプチドはタンパク質の構成要素で、生物の健康には欠かせない物質です。ペプチドには、降圧作用・抗菌作用・免疫調整作用・鎮痛作用などのうれしい作用がありますが、これらの化合物の多くは加熱すると破壊されてしまいます。そこで、安全で適切なバランスのとれた市販のローフード(生食)が役に立つのです。

⚪︎3.4低GI炭水化物

GIとは「グリセミック・インデックス(グリセミック指数)」のことです。GI値が低い食品は摂取後の血糖値が上昇しにくく、肥満や糖尿病のリスクも低いといわれています。

果物・穀物・野菜に含まれる糖質は低GIで、腸からのブドウ糖の吸収も比較的ゆっくりです。一方で、糖やデンプンは吸収されやすく、慢性炎症を増加させる可能性があると考えられています。*5

消化吸収されやすい糖やデンプンを最小限にすることで、炎症反応を抑制できるかもしれません。

⚪︎3.5良質なタンパク質

健康的なペットは、その多くが年齢を重ねるごとに良質なタンパク質を必要とします。消化しやすい動物性タンパク質は、筋肉量や健康的な免疫反応など、多くの重要な機能をサポートしています。

⚪︎3.6AGE( 終末糖化産物)を避ける

加熱処理された食品には、その多くに炎症の原因となるメイラード反応生成物が含まれています。その後期生成物であるAGE(終末糖化産物)や、脂質過酸化最終産物(ALE)は、特定のアミノ酸が加熱中に特定の糖と反応することで生成されます。

AGEは、犬や猫の体内に吸収されやすい物質です。組織のタンパク質と結合すると、タンパク質の構造的・機能的な変化を引き起こし、炎症細胞を刺激したり、酸化ストレスの増加を招いたりします。

その点、インスティンクトのローフード(生食)のような、病原体を含まない市販のローフード(生食)には、このようなAGEがまったく含まれていない、もしくは、含まれているとしても低レベルです。

加熱処理された食材を最小限に留め、良質のタンパク質や多彩な野菜・果物などのホールフードを取り入れることにより、炎症反応の抑制が期待できるかもしれません。また、犬のための抗炎症食は、関節炎・アレルギー・消化器疾患、その他の加齢性疾患などに関連する炎症を和らげるのに役立つかもしれません。

なお、犬においてローフード(生食)が抗炎症効果を持つことを示す、優れた研究も存在します。*6

⚫︎4.まとめ

栄養はシニア期の犬・猫の健康に重要な役割を果たします。中でも炎症を対象としたシニア用の食事は、栄養指導のさらなる発展に役立つ可能性が指摘されています。

適切な食材を使い、加工を最小限に留めた食事は、愛犬・愛猫の生活の質を向上させるとともに、長寿をサポートする上で大きな役割を果たすかもしれません。

⚫︎5.注目度が高まるローフード(生食)

近年、人間の栄養学の分野において「慢性的な炎症は、ある種の食品や食事を摂ることによって起こるか、少なくとも悪化する」こと、また「それらの食品や食事を避け、他の食品や食事を摂れば、その炎症を改善できる」ことが認識されるようになりました。

これらの抗炎症食には共通点があり、果物・野菜・魚・ナッツ・全粒穀物、および豆が含まれており、そのすべてが栄養価に優れ、加工は最小限に留められています。一方で、飽和脂肪が多い肉、精製された砂糖やデンプンが多い食品、高度に加工された食品は避けられています。

これらの事実が明らかになるのと時を同じくして、ペットの飼い主たちは、ローフード(生食)や加工を最小限に留めた食事を普及させるとともに、それらのフードが「慢性的な炎症を予防または改善する」と主張してきました。生肉・野菜・果物を含む新鮮な食事は、典型的な犬や猫のマイクロバイオームを変化させ、腸粘膜や免疫系、そして動物の炎症状態に直接的な影響を及ぼす可能性が指摘されています。

なお、Instinctのローフード(生食)は、獣医学博士(DVM)で認定動物栄養士(DACVIM)でもあるスーザン・ウィン博士をはじめ、フードサイエンティストや品質管理のスペシャリストが在籍する専門家チームのもと、最先端の科学的な研究結果に基づいて作られています。

犬・猫の健康寿命を伸ばし、幸せな日々をサポートするインスティンクトのローフード(生食)を、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

アダム・クリストマン(獣医、経営学修士)
スーザン・ウィン(獣医、栄養学の専門家)

*1:Laflamme, 2005
*2:Suez and Elinav, 2017
*3:Kerr et al., 2012, 2014; Herstad et al., 2017; Kim et al., 2017; Sandri et al., 2017; Algya
et al., 2018; Schmidt et al., 2018; Butowski et al., 2019
*4:Yamamoto et al., 2003
*5:Bykenet al., 2014; Ouchi et al., 2007; Adolphe et al., 2012; Blees et al., 2020; Lyu Y et al., 2022
*6:*Anderson 2018、Anturiniemi 2020、Puurunen 2022

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